相続税対策において、暦年贈与という方法をご存じでしょうか。
毎年、少額ずつ贈与すると贈与税がかからないというのは多くの人が聞いたことがあるかもしれません。これが暦年贈与と呼ばれる方法です。
暦年贈与とは、一年間の贈与額が110万円以下だった場合、贈与税がかからない仕組みを利用した贈与の方法です。つまり、毎年110万円まで非課税で財産を移すことができるので、相続税対策としてよく紹介されています。
しかし、暦年贈与は正しい方法でなければ、財産が相続税の対象となってしまう可能性があるので注意が必要です。
ここでは、有効な暦年贈与をするための注意点と対策についてご説明いたします。
暦年贈与とは
ある人の財産が他の人に移動すると、原則としてそこに税金が課されます。
贈与だけでなく相続や売買で移動した場合も同じです。しかし冒頭でもお伝えしたように、贈与の場合は年間110万円の基礎控除が認められており、毎年110万円までは贈与税が課せられない仕組みがあります。
基礎控除とは、ここまでは税金が発生しないというルールのことです。
この、基礎控除の仕組みを活用した相続税対策が、暦年贈与と呼ばれるものです。
例えば、ある人が子供に財産を譲りたいと考えたとき、一人につき年間110万円までは贈与税がかからないというわけです。
計画をたてて長期間にわたり行うことで、節税効果が大きい対策となるため、有効な節税対策として紹介されることの多い方法です。
暦年贈与と定期贈与
例えば財産が1,000万円あったとしたら、毎年いくらずつ贈与するのがいいのでしょうか。
きりよく毎年100万円ずつを贈与したいと考える人もいるでしょう。実は、ここに注意が必要です。
一定の期間に一定額の給付を目的とした贈与は定期贈与といい、贈与税の対象となる可能性があります
1,000万円を100万円ずつ毎年贈与すると取り決めた場合、定期贈与とみなされます。そうなると全額を贈与する意思が贈与開始時にあったとされ、贈与の合計額に対して税金が課せられます。
贈与税の税率は、贈与した財産が増えるにつれて徐々に税率があがり、4,500万円を超えた場合55%となります。相続税は6億円を超えた場合に55%となるので、かなり重い税率です。
定期贈与とみなされ一括で贈与税が課されると、せっかく長期にわたり贈与をしたとしても、節税の効果はなくなってしまいます。
暦年贈与を行うときの注意点や対策について、次で詳しく解説いたします。
暦年贈与を行うときの注意点
暦年贈与をする際、2つのことに注意する必要があります。
1:定期贈与とみなされないように注意
毎年繰り返して贈与することを、連年贈与と呼びます。
先にご説明した定期贈与も連年贈与も、毎年贈与を行うことを指しますが、たまたま贈与を毎年行っていたのか、予め取り決めていたかが重要な違いとなってきます。
連年贈与とみなされれば贈与額に対して毎年贈与税が課税されますが、110万円までは税金がかかりません。定期贈与とみなされれば、贈与額の合計額に対して税金が課されます。
暦年贈与による税金対策は定期贈与とみなされないようにすることが非常に重要です。
では、具体的にはどのような場合に定期贈与とされるのでしょうか。
例えば、AさんとBさんの間で、毎年110万円以下であれば贈与税を支払わずに受け取ることができるという考えのもとに、毎年100万円ずつ20年間にわたり贈与する約束がされたとします。
このケースではすでにあらかじめ取り決めた贈与であり、たまたま毎年贈与したわけではないため、定期贈与とみなされます。税務署に対して約束はしていないと主張しても、毎年同じような金額の贈与があれば疑われてしまう可能性があります。
定期贈与とされないために、次のような対策が可能です。
- 毎年、異なった金額を贈与する
- 毎年、贈与する時期を変える
- 贈与しない年をつくる
このようにして不規則に贈与をすることで、定期贈与とはみなされにくくなります。
2:名義預金とみなされないように注意
名義預金というお金のやり取りを税務署に指摘された場合、せっかく暦年贈与により非課税で贈与したつもりでも、後々相続の際に相続税を課せられる恐れがあります。
名義預金とは、例えば親が子供名義の口座に勝手に毎年100万円を積み立てていたような場合です。実質的にはこの口座の預金は親の財産であり、贈与する約束もしていません。
親が亡くなった際、親の財産であるこの口座の預金が相続税の対象となるのです。
名義預金とみなされないためには、次のような対策が有効です。
- 贈与するたびに契約書を作成する
- 贈与する人と、財産をもらう人の銀行の届出印を別のものにしておく
- 銀行の届出印と通帳、キャッシュカードを名義人が管理する
- 贈与した口座預金は名義人が自由に使えるようにしておく
- 贈与された預金は少し使っておく
名義預金とみなされないための対策は、贈与がなされたという証拠が重要です。
先程の例でいえば、親が勝手に積み立てをしていたために贈与である証拠がない状態でした。贈与をするたび契約書を作成することにより、お互いに贈与の意思があった証拠となります。
また、贈与された財産が口座の名義人のものになったという証拠として、預金を実際に使っておくのも有効な対策といえるでしょう。
暦年贈与は正しいやり方で行えば将来的に相続税の負担額を抑えられ、非常に有効な相続税対策になります。
生前にできる相続税対策は暦年贈与以外にもさまざまな方法がありますので、まずはお気軽に生前対策を得意とする生前対策あんしん相談センターへご相談ください。
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