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公正証書遺言とは

遺言書には、3つの種類があることを存知でしょうか。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

これら3つの遺言書は、各々違った特性を持ち合わせており、その作成方法も異なります。

そのため、これら3つの遺言書の相違点について理解を深めた上で、遺言者本人の意図に沿ったものを選択することが望ましいといえます。

こちらのページでは、公正証書遺言のメリット・デメリットについて詳しく解説いたしますのでご確認ください。

公正証書遺言のメリット

各都道府県に複数存在する公証役場において、本人が公証人に対して口頭で遺言の内容を伝えます。その内容を公証人が文書として完成させる遺言書のことを公正証書遺言といいます。
公正証書遺言には大きく5つのメリットがあります。 それでは、確認していきましょう。

(1)紛失する心配がない

第一に、公正証書遺言は紛失する恐れがありません。というのも、その原本は法務省の管轄する公証役場で保管されるからです。また、原本は公証役場に保管されていますが、遺言者の手元には遺言書の写し(「正本」や「謄本」と呼ばれるもの)が残存するので、遺言書の内容を確認したい場合も問題ありません。もしも、この写しを紛失してしまった場合は謄本に限っては何度でも再発行が可能で、原本には影響が及びません。

(2)偽造の防止ができる

公正証書遺言は、法律業務のプロである公証人によって作成がなされます。

  • 公証人とは、判事や検事を経験した人の中から選任される、国の公務である公証事務を担う公務員のことです。上記でもお伝えしたように、公正証書遺言は、遺言者本人から口頭で伝えられた内容を公証人がその場で筆記します。証人2人の立ち合いもありますので、偽造の心配がなく安全性に優れているといえます。

(3)無効にならない

遺言書が正しく作成されていないと無効になるケースもあります。ですが、公正証書遺言の作成は、法律の知識を持った公証人が責任を持って作成するため、日付の誤り、署名・捺印漏れ等のミスをすることなく、有効な遺言書を作成することが可能です。

(4)遺言書作成が難しい人も容易に作成ができる

遺言書作成を検討している方のなかには、ご自身で遺言書を書くことが難しいという方もいらっしゃいます。しかし、公正証書遺言は公証人が関与し、遺言者本人に代わって作成する遺言書です。公証人に直接意思を伝えることが可能であれば、容易に作成することができます。言葉を発することが出来ないハンディキャップのある方でも、筆談を利用するなどして公証人に意思を伝えることができれば、遺言書を作成することが可能です。

(5)遺産相続がスムーズに開始できる

公正証書遺言は、自身で作成した遺言書とは異なり、法的な有効性が認められている書類です。また、家庭裁判所の検認も必要としないので、すぐに遺産相続の手続きを始めることができます。
相続手続きは、多くの段階を踏む必要があり、時間もかかります。

あらかじめ公正証書遺言を作成しておくことで、いざという時に迅速に相続手続きに入ることができるのです。

公正証書遺言のデメリット

一方で、デメリットもあります。ここでは3つ挙げていきます。

(1)証人の確保が必要である

公正証書遺言の作成は、遺言者本人と公証人のみで作成されるわけではありません。公証人の他に、2人以上の証人が必要となります。証人になるのに特段資格は必要ありませんが、実際に遺言書作成日には証人の立会いが必須となるため、遺言書の内容を認知されても差し支えない人を証人に選ばなくてはなりません。利害関係のある相続人などは証人になることはできません。一般的に、法律の専門家(「行政書士」や「司法書士」)、信頼のおける友人に証人を依頼するケースが多いです。

(2)時間がかかる

公正証書遺言作成にあたっては、複数の順序を踏まなくてはなりません。公証役場との事前の連絡を通して、遺言書の内容や作成日のスケジュール調整を行います。そのため他の形式の遺言書よりも時間がかかってしまいますが、安全性や正確性は担保されます。

(3)費用がかかる

公正証書遺言は、遺言者本人のみで作成が完結するものではありません。公証人に支払う手数料や作成に必要な戸籍を取得する実費などの費用がかかります。公証人手数料は、遺言書に記載する財産の総額や、受遺者の人数によって異なります。公証人が計算して算出されるので、作成当日に現金にて支払うものです。また、公正証書遺言は修正が可能で、修正する際にはその都度費用がかかるので注意が必要です。

公正証書遺言作成までの流れ

ここまで、公正証書遺言作成にあたってのメリット・デメリットを解説してきました。

上記を踏まえた上で、実際に公正証書遺言を作成する際の流れについて確認していきます。

(1)遺言内容を考える

遺言書に記載したい内容を考え、原案の作成を行います。この段階ではまだメモ書き程度でも構いません。

(2)公証役場に連絡をする

遺言書に記載したい内容が決まったら、公証役場に連絡をします。文案の事前確認をしてもらう日程や、作成日の予約をとりましょう。

(3)必要書類を収集

戸籍謄本や住民票等、複数の書類をそろえ、公証役場に提出します。印鑑登録証明書や戸籍、住民票などは発行から3ヶ月以内のものが必要なので、注意が必要です。

(4)2人以上の証人を選任する

公正証書遺言作成の当日に立ち会ってもらう証人を2人以上選任する必要があります。

(5)公証役場の日程調整、出向く

始めに証人・公証人と公証役場に行く日程を決め、当日までに打ち合わせを行います。

(6)公正証書遺言に署名・捺印

公正証書遺言の内容を確認し、遺言者・公証人・証人(2人以上)が署名と捺印をします。遺言者は実印を用意しておく必要があります。

(7)公証人手数料の支払い

公正証書遺言の正本が作成されたタイミングで、遺言者は公証人手数料を支払います。

  • 公証人手数料は現金支払いのみとなっているので、事前に必要な金額を確認しておきましょう。

上記の通り、公正証書遺言の作成までには様々なステップを踏む必要があります。公証人とのやり取りなども発生しますし、文案もご自身で起案しなければなりません。ご自身ですべて行うのは煩雑で難しいといえます。その場合は相続の専門家である行政書士や司法書士に依頼することをおすすめします。

公正証書遺言作成の際の注意点

公正証書遺言を作成する際には、以下の注意が必要です。

  1. 遺留分の配慮が必要相続人の中で一定範囲の人たちに最低限の取り分を保障する遺留分という制度があります。
    遺言書によって、遺留分の範囲を超越した相続が行われた場合、遺留分が侵害されている人は該当部分を請求することができます。遺留分を侵害するような遺言書は無効になることはありませんが、遺言書の内容よりも遺留分の権利が優先されるので、遺言者の死後、相続人は遺留分の請求が可能になり、トラブルに発展することもあります。
  2. 公正証書遺言でも無効になることがある
    公正証書遺言だからといって、遺言者に判断能力がない状況で作成されたとみなされる遺言書は無効になり得ます。また、認知症の方など、作成の段階で公証人から判断能力がないと見なされたら作成ができないこともありますので注意が必要です。

まとめ

ここまで公正証書遺言のメリット・デメリット、手続きの流れ、注意点について確認してきました。公正証書遺言は安全性と確立性の高い形式であることを理解していただけたかと思います。

冒頭にお伝えした通り、遺言書には公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。公正証書遺言に関わる公証人は、元判事、元検事といった法律の専門家が担当し、遺言書の書式が法的に有効か否かをチェックするという大事な役割を担っています。

ご自身がこれまで生きてきた証ともいえる大切な財産を、特定の誰かに確実に残したい、そのような方には公正証書遺言の作成を推奨しています。
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