近年は終活という言葉をよく耳にいたしますが、みなさんは自分や大切な人の死後に、遺言書を残すことについて考えたことはあるでしょうか。
遺言書とは、死後の財産の処分方法について最終意思を示す法的な書類です。
ここでは、大切な遺言書が無効となってしまうケースや対策について説明していきます。
自筆証書遺言が無効になるケース
遺言書の種類
遺言書にはいくつか種類があり、大きく分けると自筆証書遺言と公正証書遺言というものがあります。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は自分で手書きで作成するもので、費用もかからずで手軽に作ることができます。
法律上の要件を満たすものでないと無効となるので注意が必要です。どんな場合に無効となるのか、例を紹介します。
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(1)書き方の不備
きちんと法律上の要件を満たす必要があります。
- 全文を遺言者が自筆で書く
- 作成日付を自筆で正しく書く
- 自筆で氏名を書く
- 印鑑を押す
- 訂正箇所は印を押し、どこを訂正したかを欄外に書き署名をする
(2)内容の誤り
遺言書には財産の詳細を明確に記載をする必要があります。
例えば預金なら、銀行の支店、口座の種類、口座番号などを誤りが無いように書く必要があります。
(3)他の人が書かせた(書いた)と思われるもの
筆跡鑑定の調査をされることもあるので注意が必要です。
(4)遺言能力が無いとされる場合
15歳未満の人、または認知症や精神上の障害があり、遺言書の作成時の判断能力が正常ではないと判断されたときは無効となる恐れがあります。
(5)遺言者が複数人の場合
両親から子供へなど遺言者が複数の人となっていると、遺言書を残した人のうち、亡くなった人とまだ存命の人がいる状況が発生する恐れがあり、相続上のトラブルになりかねません。
公正証書遺言が無効になるケース
公正証書遺言とは
公正証書遺言は公証人役場で公証人に作成してもらう遺言書です。
専門家に作成してもらうので、無効となるケースは考えにくいように思えますが、どのような場合に無効となるのでしょうか。
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(1)遺言能力が無いとされる場合
自筆証書遺言と同様で、遺言者の作成時の判断能力が正常ではないと判断された場合です。
(2)口授を欠いていた場合
「口授」とは、口頭で遺言内容を遺言者が公証人に伝えることをいいます。
公正証書遺言を作成する際、遺言者は口頭で遺言の内容を公証人に伝える決まりがあります。事前に準備した紙を渡すなど、口頭以外の方法で伝えていた場合は口授を欠いていますので無効になる可能性があります。
(3)証人が不適格である場合
公正証書遺言は2人以上の証人が必要です。未成年の人、相続人や公証人の家族、4親等以内の親族、公証人役場の職員などは不適格とされます。
(4)内容に真実との錯誤があった場合
言い間違い、勘違いなどで遺言者の意図していた内容とは違っている場合です。
(5)公序良俗に反する場合
愛人に全財産を譲るなど道徳的に認められないケースです。
無効にならない遺言書を書くためには
自筆証書遺言、公正証書遺言とも、作成するときは特にどんなことを注意すればいいのでしょうか。
自筆証書遺言の注意点
自筆証書遺言は、書き方の不備で無効となってしまうケースが最も多くあります。対策としては、公正証書遺言を作成するのが確実です。
どうしても自筆証書遺言を書きたいという場合は、書籍なども多く出版されていますので参考にしていただくか、専門家のアドバイスを受けながら作成されることをおすすめ致します。
また、自筆証書遺言は手書きですので他の人に書き換えられてしまう恐れもあります。
紛失、死後に発見されないなどのリスクもあるので、法務局での自筆証書遺言保証制度を利用することも一つの手段です。
公正証書遺言の注意点
公正証書遺言は公証人に作成してもらうので、自筆証書遺言のように書き方(形式)の不備で無効になることはないといえます。無効になる可能性が低いとはいえ、公正証書遺言では遺言者の遺言能力が認めらないケースには特に注意が必要です。
認知症などがある場合は、医師に診断書を書いてもらうとよいでしょう。公正証書遺言を作成した時点での遺言能力について判断するのは裁判所ですが、医師の診断書はその証拠となるからです。
遺言書は早めに作成を
誰もが加齢とともに判断能力は徐々に衰えていきますので、遺言書は早めに作成することが無効にならない遺言書を書くポイントです。
遺言を残そうと思い立った時、すでに判断能力が疑わしい状態では取り返しがつきません。
いつどんな状態になるか誰もわかりませんので、ご自身の判断能力が十分と思える段階で、遺言書について考えてみるとよいかもしれません。
まとめ
ここまで、遺言書が無効となってしまうケースや注意点をお伝えしてまいりました。
遺言書が無効であるとされるまでには、ご紹介したようなケースに該当するのか、その遺言書が有効か無効かを時間をかけて調べる必要があります。
残された家族のためにも、無効にならない遺言書を書くことが大切です。
自分一人で遺言書を作成したり相続対策をすると、結果的にご家族に相続のトラブルを招く要因を作ってしまうかもしれません。
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