遺言書の最後に記載する「付言事項」というものを御存じでしょうか?
遺言書に記載される内容は、法的効力のある法定遺言事項と、法的効力のない付言事項があります。
法定遺言事項には、おおまかに言うと身分に関する事(認知等)、相続に関する事(財産の分配方法等)、財産に関する事(財産の記載)の3つが記載されます。
これらとは全く異なり、付言事項には遺言者の気持ちや相続人に対するメッセージが記載されます。
付言事項とは
遺言書において法的効力のない記載事項を、付言事項といいます。
相続人が最後に受け取る、遺言者からのメッセージとも言えるでしょう。
付言事項には法的効力がないので不必要だと思われるかもしれませんが、自由に文章を作成することが出来るので、遺言者自身の正直な気持ちを伝えることが出来ます。
感謝の気持ちを伝えるだけでなく、相続トラブルを防ぐことも出来る、重要な役割を担っているのです。遺言書の内容によっては、相続人の誰かを傷つけるかもしれません。
どうしてこのような財産の分配方法になったかの説明を書くことで相続人の理解を得ることが出来、自身の希望をスムーズに気持ちよく受け入れてもらえるようにもなるのです。
付言事項を書く際の注意点
付言事項は、相続人が受け取る遺言者からの最後のメッセージです。
死後に受け取るラブレターとも言えるでしょう。
最後の印象はいつまでの残るもの。
決して否定的な印象を与えず、読み終わった後温かい気持ちになるように肯定的な言葉で締めくくる事をお勧めします。
付言事項に入れたほうがよいのは、感謝の気持ち、遺言の動機、財産配分の意図や動機、残された家族への希望や願い等です。
また、付言事項が長くなりすぎても遺言の趣旨が曖昧となってしまいます。
長文になる場合には、別にお手紙を用意した方がいいかもしれません。
パターン別 付言事項の文例紹介
感謝の気持ちを伝えたい
○○さん(妻)、人生の荒波をどんな時も一緒に乗り越えてくれてありがとう。○○さんに出会えた事が、私の人生の一番の幸運です。私が亡くなった後も決して涙にくれず、どうか笑顔で過ごして下さい。天国から見守っています。
遺留分請求をさけたい
○○さん、いつもお母さんのお世話をありがとう。お母さんに多くの財産を残すことにしたのは、安心して老後を過ごしてもらいたいからです。○○さんの取り分は少なくなってしまいますが、優しく賢い○○さんならきっと理解してくれることと思います。○○さんが私の子供として生まれてきてくれた事が、私の最大の誇りなのです。ありがとう、そしてこれからもお母さんを宜しく頼みます。
長男の嫁に遺贈する場合
長男Aの嫁である○○さんは、先に旅立った妻そして私の介護に並々ならぬ配慮をして下さいました。老人ホームに入ることなく、大好きな家族の家で最後まで過ごすことが出来たのも、ひとえに○○さんのおかげです。○○さん、ありがとう。そこで、○○さんにも遺産の一部を残すことにしました。次男や三男も○○さんの頑張りは見ていましたし理解してくれることでしょう。これからも家族みなが仲良く暮らしていく事を、心から願っています。
まとめ
付言事項は必ず書かなければならないというものではありません。
付言事項のない遺言書も多くあります。
しかし、付言事項を用いて遺言書作成の経緯や思いを伝えることは沢山のメリットがあります。
特にトラブルが想定される場合には書くことをお勧めします。
自分の思いを伝えられるだけでなく、相続人の理解を得やすくなるからです。「親の思いであれば尊重しよう」と思ってくれるのです。少しの気遣いが、円満な遺言執行に繋がる事を心に留めておきましょう。